大垣

松尾芭蕉『奥の細道』より「大垣」です。「奥の細道」結びの地、大垣です。ここにひとつの旅は終わります。しかし芭蕉は舟に乗り、伊勢の二見浦へとまた旅立っていきます。



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原文

露通も此みなとまで出むかひて、みのゝ国へと伴ふ。駒にたすけられて大垣の庄に入ば、曾良も伊勢より来り合、越人も馬をとばせて、如行が家に入集る。前川子・荊口父子、其外したしき人々日夜とぶらひて、蘇生のものにあふがごとく、且悦び、且いたはる。旅の物うさもいまだやまざるに、長月六日になれば、伊勢の遷宮おがまんと、又舟にのりて、

蛤のふたみにわかれ行秋ぞ


現代語訳

路通もこの港まで迎えに出てきて、美濃の国へ同行してくれた。馬に乗って大垣の庄に入ると、曾良も伊勢から来て合流し、越人も馬を飛ばしてきて、如行の家に集合した。

前川子・荊口父子、その他の親しい人々が日夜訪問して、まるで死んで蘇った人に会うように、喜んだりいたわってくれたりした。

旅の疲れもまだ取れないままに、九月六日になったので、伊勢の遷宮を拝むため、また舟に乗って旅立つのだった。

蛤のふたみにわかれ行秋ぞ
(意味)離れがたい蛤のふたと身が別れていくように、お別れの時が来た。私は二見浦へ旅立っていく。もう秋も過ぎ去ろうとしている。

露通
八十村路通。近江大津の人。もとは三井寺の学僧であったという。乞食放浪行脚の俳人。はじめ「奥の細道」の随行者に予定されていた。素行が悪く芭蕉の怒りを買ったこともあるが、後に許された。
越人
越智越人(おちえつじん)。名古屋の染物問屋。別号に槿花翁(きんかおう)。尾張蕉門の重鎮で、蕉門十哲の一人。元禄元年(1688年)「更級紀行」の旅に同行。
如行
近藤如行(こんどうじょこう)。通称源太夫。もと大垣藩士だが僧侶になる。
前川子
津田前川(つだぜんせん)。大垣藩士で大垣蕉門の一人。「子」は敬称。
荊口
宮崎荊口(みやざきけいこう)。通称太左衛門。大垣藩士。此筋(しきん)・千川(せんきん)・文鳥(ぶんちょう)の三人の子とともに芭門に入る。
伊勢の遷宮
伊勢神宮は皇大神宮(こうたいじんぐう・内宮)と豊受大神宮(とようけだいじんぐう・外宮)を中心とした大小の社の総称。遷宮は二十年ごとに本殿改築の際にご神体を移す儀式のこと。40代天武天皇が定め、41代持統(じとう)天皇の4年(690)に始まる。


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朗読:左大臣

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