尾花沢

芭蕉は尾花沢の富豪、島田屋清風(しまだやせいふう)を訪ねます。「奥の細道」の中で4句も詠まれているのは、この「尾花沢」と「羽黒」「象潟」のみです。



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原文

尾花沢にて清風と云者を尋ぬ。かれは富るものなれども志いやしからず。都にも折々かよひて、さすがに旅の情をも知たれば、日比とヾめて、長途のいたはり、さまざまにもてなし侍る。

涼しさを我宿にしてねまる也

這出よかひやが下のひきの声

まゆはきを俤にして紅粉の花

蚕飼する人は古代のすがた哉 曾良


現代語訳

尾花沢にて以前江戸で知り合った清風という人を訪ねた。この人は大富豪なのだが金持ちにありがちな品性のいやしさなどまるでない。

江戸にも時々出てきているので、さすがに旅人の気持ちもわかっているようだ。何日か逗留させてくれ、長旅の疲れを労ってくれ、いろいろともてなしてくれた。

涼しさを我宿にしてねまる也
(意味)この涼しい宿にいると、まるで自分の家にいるようにくつろげるのだ。

這出よかひやが下のひきの声
(意味)飼屋の下でひきがえるの声がしている。どうかひきがえるよ、出てきて手持ち無沙汰な私の相手をしておくれ。

まゆはきを俤にして紅粉の花
(意味)尾花沢の名産である紅の花を見ていると、女性が化粧につかう眉掃きを想像させるあでやかさを感じる。

蚕飼する人は古代のすがた哉 曾良
(意味)養蚕する人たちのもんぺ姿は、神代の昔もこうだったろうと思わせる素朴なものだ。

清風
島田屋鈴木清風。本名鈴木道佑(とうゆう)。島田屋八衛門と称する紅花問屋。「紅花大尽」といわれた豪商。清号は俳号。談林派の俳人で芭蕉や曾良とは江戸で交流があった。
「かれは富るものなれども志いやしからず」
『徒然草』の「昔より、賢き人の富めるは稀なり」を踏まえるか?


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