天竜寺・永平寺
「物書て扇引さく余波(なごり)哉」…金沢から同行してきた北枝との別れが印象的な場面です。
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原文
丸岡天竜寺の長老、古き因あれば尋ぬ。又、金沢の北枝といふもの、かりそめに見送りて此処までしたひ来る。所々の風景過さず思ひつヾけて、折節あはれなる作意など聞ゆ。今既別に望みて、
物書て扇引さく余波哉
五十丁山に入て、永平寺を礼す。道元禅師の御寺也。邦機千里を避て、かゝる山陰に跡をのこし給ふも、貴きゆへ有とかや。
現代語訳
丸岡の天竜寺の長老は古い知人だから訪ねた。また、金沢の北枝というものがちょっとだけ見送るといいつつ、とうとうここまで慕いついてきてくれた。
その場その場の美しい景色を見逃さず句を作り、時々は句の意図を解説してくれた。その北枝ともここでお別れだ。
物書て扇引さく余波哉
(意味)金沢の北枝としばらく同行してきたが、いよいよお別れだ。道すがら句を書きとめてきた扇を引き裂くように、また夏から秋になって扇をしまうように、それは心痛む別れなのだ。
五十丁山に入って、永平寺にお参りする。道元禅師が開基した寺だ。京都から千里も隔ててこんな山奥に修行の場をつくったのも、禅師の尊いお考えがあってのことだそうだ。
注
- 丸岡天竜寺
- 「丸岡」は誤り。天竜寺があるのは松岡町。松平五万石城下。天竜寺は曹洞宗の寺。永平寺の末寺。「長老」は禅宗では住職のこと。
- 北枝
- 立花源四郎。加賀の人。研刀業。「奥の細道」の旅で芭蕉の訪問を受け、兄牧童と共入門した。芭門十哲の一。「さゞん花に茶をはなれたる茶人哉」
- 永平寺
- 曹洞宗の総本山。福井県吉田郡永平寺町。道元禅師開基。
- 道元禅師
- 鎌倉時代初期の禅僧。曹洞宗の開祖。13歳で比叡山にのぼり、翌年出家。宋に渡り帰国後、永平寺を開いた。著書『正法眼蔵』(しょうぼうげんぞう)
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